法定福利費の請求書への書き方|建設業の計算例と消費税の扱い
元請・上位会社から「請求書に法定福利費を分けて書いてください」と言われて、何をどう計算すればよいのか困った、という社長や奥さんのお話をよく伺います。法定福利費は、請求書だけで決めるものではなく、見積書で内訳を示して、契約で金額を決めて、そのとおりに請求するという流れで扱います。このページでは、その流れに沿って、計算のしかたと請求書への書き方をまとめます。保険料率などの数字は2026年10月時点のものです。
請求書全体の書き方は → 建設業の請求書の書き方 で書いています。
法定福利費とは
建設業でいう法定福利費とは、会社が雇っている職人さんの社会保険料のうち、会社(事業主)が負担する分のことです。対象になるのは、健康保険、40歳から64歳の人の介護保険、厚生年金、雇用保険です。
職人さんの給料から天引きする本人負担分は給料の中に入っているので、法定福利費として分けて書くのは会社の負担分だけです。社会保険に入るには、この会社の負担分を工事の代金の中から確保できないと続かないので、国は、見積書で法定福利費を他の経費と分けて示すよう、長く求めてきました。
| 保険 | 対象 | 会社の負担 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 社会保険に入っている職人さん | 保険料の半分 |
| 介護保険 | 40〜64歳の職人さん | 保険料の半分 |
| 厚生年金 | 社会保険に入っている職人さん | 保険料の半分 |
| 雇用保険 | 雇用保険に入っている職人さん | 建設の事業の会社負担の率 |
見積書で内訳を示して、請求書につなげる
法定福利費は、請求書を書く前の見積の段階で決まっているのが本来の形です。流れは次のとおりです。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 見積書 | 工事の代金とは別に、法定福利費(会社負担分)を内訳として書く |
| 契約(注文書・注文請書) | 元請・上位会社と話し合い、法定福利費を含めた金額で契約する |
| 請求書 | 契約で決めた法定福利費を、工事の代金と分けた行で請求する |
2025年12月12日に施行された改正建設業法では、中央建設業審議会が労務費の基準を示し、著しく低い労務費での見積りや契約が禁止されました。この禁止は、発注する側だけでなく、請ける側の建設業者にも当てはまります。国土交通省は、法定福利費(事業主負担分)を、見積書で特に内訳を明示することとされている経費として挙げています。
見積書で法定福利費を分けていないまま契約した現場で、請求書にだけ法定福利費を足しても、契約の金額を超えた分は払ってもらえません。契約の金額の中に法定福利費も含まれているという考え方で、上位会社から「内訳を分けて書いて」と言われたときは、契約の金額の内訳として分けることになります。どちらの意味か分からないときは、上位会社の事務の方に確かめてください。
法定福利費の計算のしかた
見積書の法定福利費は、その工事に入る職人さんの給料にあたる労務費に、会社が負担する保険料率を掛けて出すのが一般的なやり方です。
法定福利費 = 労務費 × 会社が負担する保険料率
保険料率は、会社が入っている保険と地域の率を使います。協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに違い、2026年度は一番高い佐賀県が10.55%、一番低い新潟県が9.21%、東京都は9.85%です。2026年度の主な率をまとめると次のとおりです。
| 保険 | 保険料率(合計) | 会社の負担 | いつから |
|---|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ・東京都) | 9.85% | 4.925% | 2026年3月分から |
| 介護保険(40〜64歳) | 1.62% | 0.81% | 2026年3月分から |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 0.115% | 2026年4月分から |
| 厚生年金 | 18.3% | 9.15% | — |
| 子ども・子育て拠出金 | 0.36% | 0.36%(全額会社) | 2020年4月分から |
| 雇用保険(建設の事業) | 1.65% | 1.05% | 2026年4月から |
子ども・子育て支援金は、2026年4月分から健康保険料といっしょに納めるようになった新しいお金です。見積書の法定福利費に入れるかどうかは、元請・上位会社と確かめておくと安心です。子ども・子育て拠出金は、厚生年金に入っている職人さんの分を会社だけが負担するお金で、国土交通省の見積書の作成手順でも法定福利費に含めて計算します。健康保険が協会けんぽでない会社は、加入している保険の率で計算します。
社会保険に入っていない一人親方や個人事業主などが現場に入る場合、その人数や割合が分かれば、その分は法定福利費から除いて計算します。
計算の例
東京都の会社で、ある現場に入る職人さんの労務費が100万円、全員が社会保険と雇用保険に入っていて、40歳未満の場合です。
| 保険 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 1,000,000円 × 4.925% | 49,250円 |
| 子ども・子育て支援金 | 1,000,000円 × 0.115% | 1,150円 |
| 厚生年金 | 1,000,000円 × 9.15% | 91,500円 |
| 子ども・子育て拠出金 | 1,000,000円 × 0.36% | 3,600円 |
| 雇用保険 | 1,000,000円 × 1.05% | 10,500円 |
| 合計 | 156,000円 |
労務費に対しておよそ16%が、会社が負担する法定福利費になる計算です。40歳以上の職人さんがいれば、その人の労務費に介護保険の0.81%が加わります。実際の保険料は標準報酬月額などで決まるので、この計算は見積もりのための目安です。
請求書への書き方(請負・出来高の場合)
契約で法定福利費を分けている場合は、請求書でも工事の代金と分けた行で書きます。出来高で請求する現場なら、工事の代金と同じ出来高の割合で、法定福利費も請求する形が分かりやすいです。
たとえば、工事の代金200万円、法定福利費129,540円で契約した現場で、10月分の出来高が40%の場合です。
| 品名 | 契約金額 | 今回の出来高 | 今回の請求額 |
|---|---|---|---|
| ○○邸新築工事 内装工事 | 2,000,000円 | 40% | 800,000円 |
| 法定福利費(事業主負担分) | 129,540円 | 40% | 51,816円 |
| 小計 | 851,816円 | ||
| 消費税(10%) | 85,181円 | ||
| 合計 | 936,997円 |
消費税の1円未満は切り捨てています。切り捨て・切り上げ・四捨五入のどれにするかは自分で決められますが、インボイスでは1枚の請求書につき税率ごとに1回だけ端数処理をします。元請・上位会社の指定請求書に法定福利費の欄があれば、その欄に書きます。出来高の請求書全体の書き方は → 出来高の請求書の書き方 で書いています。
請求書への書き方(常用の場合)
常用の場合も、注文書で人工単価とは別に法定福利費を決めていれば、請求書でも行を分けて書きます。人工単価に法定福利費が含まれている取り決めなら、分けずに人工代だけを書きます。
| 品名 | 数量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| ○○現場 常用(10/1〜10/31) | 40人工 | 20,000円 | 800,000円 |
| 法定福利費(事業主負担分・注文書のとおり) | 40人工 | 2,000円 | 80,000円 |
| 小計 | 880,000円 | ||
| 消費税(10%) | 88,000円 | ||
| 合計 | 968,000円 |
この例の「1人工あたり2,000円」は、注文書でそう決めた場合の書き方の例です。常用の請求書全体の書き方は → 常用の請求書の書き方 で書いています。
法定福利費に消費税はかかりますか
法定福利費は、工事の代金の一部として受け取るお金なので、消費税の対象として計算するのが基本です。社会保険料そのものには消費税がかからないので、「法定福利費は非課税」と思い込んで、消費税の計算から外している請求書を見かけることがあります。上位会社から受け取るのは保険料ではなく、工事をした代金の一部という扱いになります。
上の例でも、工事の代金と法定福利費を足した小計に、10%の消費税を掛けています。個別の扱いで迷うときは、顧問の税理士さんに確かめてください。
一人親方の場合
人を雇っていない一人親方は、自分で国民健康保険と国民年金に入っていて、会社として負担する保険料がありません。そのため、法定福利費を分けて請求することはふつうありません。
一方で、時間も場所も指示され、社員と同じように働いているのに一人親方として扱われている場合は、本来は雇用契約を結んで社会保険に入るべき働き方にあたることがあります。国土交通省の社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインでは、働き方自己診断チェックリストを使って働き方を確かめることを勧めています。一人親方の請求の疑問は → 一人親方の請求のよくある疑問 でまとめています。
法定福利費を削られそうなとき
見積書で示した法定福利費を、「他の経費で調整して」と全体の金額ごと値引きされることがあります。国土交通省のガイドラインでは、元請が下請の見積書の法定福利費を一方的に削ったり、他の経費の値引きで実質的に削ったりしないよう求めていて、法定福利費も払えないような金額での契約は、建設業法の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがあるとしています。
話し合いのときは、労務費と保険料率、計算の式を見積書に残しておくと、どこから出た数字かを説明しやすくなります。それでも解決しないときは、国土交通省や都道府県の建設業の相談窓口に相談できます。
請求書を出す前に確かめること
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 法定福利費を契約で分けているか | 注文書・注文請書・見積書 |
| 今回の請求額の出し方 | 出来高の割合、人工数 |
| 前回までに請求した法定福利費 | 前回までの請求書の控え |
| 消費税の計算に法定福利費を含めたか | 小計と消費税の行 |
| 指定請求書の欄 | 元請・上位会社の書式 |
| 保険料率が今年度のものか | 協会けんぽ・労働局の料率表 |
保険料率は毎年のように変わります。協会けんぽの健康保険料率は3月分から、雇用保険料率は4月から変わることが多いので、年度が変わったら見積書の率も見直しておくと、後の請求で金額がずれません。
建設業の請求事務を任せたいとき
RY consulting は、一人親方・小さな専門工事会社の毎月の請求書づくりを代わりに引き受けています。出面をLINEで撮って送っていただくだけで、手書きの出面表でも大丈夫です。元請・上位会社の指定の書式があればその書式で、なければいつもの書式で、現場ごとに請求書をお作りします。常用も出来高も扱い、法定福利費を分けた契約なら、その行も契約どおりに計算します。料金は職人さんの人数に応じたシンプルプランで、LPの料金の欄を見れば全部わかります。契約期間の縛りはありません。
出典
- 国土交通省「改正建設業法を踏まえた法令遵守 建設業の元請・下請ルールについて」(令和7年12月4日) https://www.qsr.mlit.go.jp/n-park/construction/pdf/R7_seminar2_kougi1-1.pdf
- 国土交通省「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001473651.pdf
- 国土交通省「法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順」 https://www.mlit.go.jp/common/001090440.pdf
- 全国健康保険協会「令和8年度都道府県単位保険料率」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/insurance_rate/rate_prefectures/r08
- 厚生労働省 山形労働局「令和8年度の雇用保険料率について」 https://jsite.mhlw.go.jp/yamagata-roudoukyoku/koyouhoken-20260316.html
- 国税庁 タックスアンサー No.6105「課税の対象」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6105.htm
- 国税庁 インボイスQ&A 問57 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/57.pdf